風と運動の実験 ── 砂丘・跳躍・噴射口・鉄球・爆風
風は目に見えないが、粉を運び、山を作り、物を飛ばす。どの粉がどれくらいの風で動くのか。砂丘はなぜ柵の手前にできるのか。SANDBOX の 3 つの実験(風で砂丘を作る/蒸気で鉄球を飛ばす/火薬を爆発させる)を軸に、風成運搬と運動量の入口を案内する。
風の見方:🌡 の表示で風の向きと強さが分かる。送風機(🔧 機)は置いた向きに風を出す。噴射口は背中側の圧力で吹く。📈 で一点の圧力を記録できる。🔬 で昼夜と季節を止めておくと、風以外の条件がそろう。
1. 粉が風で動く条件(閾値)
模型では、粉の種類ごとに「この強さの風を超えたら動く」という閾値を決めている。軽くて小さい粒ほど弱い風で動く。
| 粉 | 風の閾値 | どんな風で動くか |
|---|---|---|
| 雪・灰・落ち葉 | 0.3 | そよ風。送風機から遠くても動く |
| 種 | 0.5 | 風で散らばる(種子の散布) |
| 火薬 | 0.6 | やや強い風 |
| 砂 | 0.7 | 送風機の近く、または爆風 |
| 土砂 | 0.9 | 強い風だけ(乾いた土砂) |
| 土 | 0.95 | 乾いた土は強風で舞う(黄砂) |
| 石炭 | 1.0 | 強風 |
| 粘土 | 1.4 | 爆風だけ |
| 泥・砂利 | 1.6 | 爆風だけ。ふつうの風では動かない |
- 閾値は相対値。順番(雪 < 砂 < 土 < 砂利)と「軽くて小さいものほど動きやすい」という傾向を見てほしい。本物の風成運搬でも、粒の大きさと密度で「動き出す風速」が決まる(バグノルドの研究が有名)。
- 山の表面の粒は、自分の 1 つ上を流れる風を受ける。山の中の粒は風を受けない。だから風で削られるのは表面からで、山は少しずつ痩せていく。
- やってみる:雪・砂・砂利の山を同じ大きさで並べ、同じ距離に送風機を 1 つ置く。動く順番と、動かない山を予想してから確かめる。送風機を 2 つ・3 つと増やすと、砂も動き出す。送風機は 10 マス先まで粉を直接押すので、遠くへ運ぶには送風機を並べてリレーする(🎯 課題「柵の手前に砂丘」)。
2. 風で砂丘を作る(運搬と堆積)
🧪「風で砂丘を作る」を準備する。左の送風機の風で砂が風下へ運ばれ、柵の手前に吹きだまりができる。
- 風は柵にぶつかると弱まり、柵の風上側と風下側に風の弱い場所ができる。粒は風が閾値を下回った所で落ちる。だから吹きだまりは柵の手前と裏にできる。
- 強い風では、粒は 1 歩で数マス跳ぶ(跳躍、サルテーション)。本物の砂丘でも、砂粒は転がるのではなく跳ねながら進み、着地の衝撃でほかの粒を弾き出す。
- 本物の砂丘は風上側がゆるく、風下側が急になる(風上側は削られ、風下側は落ちた粒が安息角で積もる)。模型でも柵の手前の吹きだまりで似た形になることがある。斜面の角度を数えて比べてみてほしい。
- 雪で同じことをすると、弱い風でも吹きだまりができる(雪庇・吹きだまりの成り立ち)。灰は火山灰の堆積、落ち葉は秋の吹きだまり。
数で確かめる
- 📏 で「柵の手前」と「送風機のそば」の 2 か所を範囲に指定する(1 か所ずつ記録して CSV に出す)。
- 砂の粒の数が、送風機のそばで減り、柵の手前で増える様子をグラフにする。合計はほぼ一定(庭の外へ出た分だけ減る)。
- 送風機の数を変えて、「柵の手前に 100 粒たまるまでの時間」を比べる。
3. 蒸気で鉄球を飛ばす(圧力差と運動量)
🧪「蒸気で鉄球を飛ばす」を準備する。ボイラーの圧力が上がると、噴射口から蒸気が吹き出して鉄球を押し、鉄球がガラスに当たる。
- 噴射口は「背中側の部屋の圧力が高いときだけ、置いた向きに吹く」。吹いた分だけ部屋の圧力は下がる。圧力の高い所から低い所へ気体が流れる、という一方通行の道。
- 鉄球は速度を持つ唯一の粒。風・噴射・爆風で加速し、速いほど遠くへ飛ぶ。ガラスと氷は割り、石と金属では跳ね返る。
- 鉄球どうしがぶつかると勢いを分け合う。止まっている鉄球の列に速い鉄球を当てると、端の鉄球が飛び出す(ニュートンのゆりかごの平面版)。
- 止まった鉄球は転がって落ちる。
やってみる:噴射口の向きを上にして、鉄球を真上に飛ばす。上がって落ちてくるまでの時間を、圧力を変えて比べる。圧力が高いほど高く上がり、滞空時間が長い。これは「初速が大きいほど高く上がる」という放物運動の入口。
4. 火薬を爆発させる(爆風)
🧪「火薬を爆発させる」を準備し、炎で火薬の山に触れる。
- 火薬は急に燃えて、一瞬で大量の気体を出す。模型では「圧力と風の急な追加」として表す。周りの粉が吹き飛び、閾値の高い砂利や泥も動く。
- 爆風は圧力の波として広がり、遠くほど弱くなる。📈 を火薬から 5 マス・10 マス・20 マス離れた所に置いて(1 か所ずつ)、圧力の山の高さを比べると、距離で減ることが分かる。
- 器の中で爆発させると、圧力が逃げ場を失って壁を壊す。ただし一瞬の爆風では壁は壊れない設計(限界超えが続いたときに壊れる)で、器の中に閉じ込めた気体が溜まってから壊れる。「爆発の瞬間」と「壊れる瞬間」がずれるのを見てほしい。
- 鉄球のそばで爆発させると、鉄球が飛ぶ。爆風が物を動かすのは、気体の粒が鉄球を押すから(運動量の受け渡し)。
模型の爆発は「圧力の波」であって、火薬の化学(硝石・硫黄・炭の反応)は扱っていない。火薬の粉は風の閾値 0.6 で、静かに置けば動かない。
5. まとめの問い
- 同じ送風機で、雪は動くのに砂利は動かない。粒の何が違うのか。本物の川や海岸で、粒の大きさで運ばれ方が違う例を挙げる。
- 砂丘の風上側と風下側で、斜面の角度はどう違うか。理由を「削る」と「積もる」で説明する。
- 噴射口の圧力を 2 倍にしたら、鉄球の飛ぶ距離は 2 倍になるか。測って答える。
- 爆風は距離とともにどう弱まるか。5 マスと 10 マスで圧力の山の高さの比はいくつか。
6. 模型の限界(ここは本物と違う)
- 風は 4×4 マスの粗い格子で解いている。渦や乱流は表せていない。柵の裏の弱風は「格子が塞がれると風が弱まる」規則の結果で、本物の剥離渦とは違う。
- 速度を持つのは鉄球だけ。砂粒の跳躍は「風の強さに応じて何マス跳ぶか」の規則で、粒ごとの速度は追っていない。
- 摩擦・回転・弾性は表現していない。鉄球の跳ね返りは決めた規則による。
7. 水が運ぶ:川の実験
風だけでなく、流れる水も粒を運ぶ。🧪「川で土を運ぶ」は、坂の上に湧き口を置いて川を作る実験。坂を落ちる水が土を削って土砂にし(侵食)、土砂は流れに乗って下流へ進み(運搬)、右の池で止まって積もる(堆積)。途中の砂利の段は削れない。上流が削れて下流に積もる、という川の形が数分でできる。🎯 課題「川で土砂を運べ」では、池に 30 粒積もらせる。風と水、どちらも「速いと運び、遅いと落とす」のは同じ。
関連:圧力の実験(ボイラー・安全弁・ダム)、熱の実験(沸騰・凝結・凍結)、SANDBOX の科学(模型の仕組みと限界)。