圧力の実験 ── ボイラー・安全弁・レンガの器・ダム
閉じた器の中で水を沸かすと何が起きるか。器の材料を変えると、どこまで耐えるか。深い水はなぜ下の方から壁を壊すのか。SANDBOX の 5 つの実験(ボイラーを破裂させる/安全弁で破裂を防ぐ/レンガの器はどこまで耐える/ダムを決壊させる/蒸気で鉄球を飛ばす)を、予想 → 観察 → 数で確かめる、の順で案内する。模型の仕組みを先に読むと、数の意味が分かりやすい。
この記事で使う道具:🧪 実験ガイド(場面を一発で用意する)、📈 記録(一点の温度と圧力を時系列で)、📏 範囲の計測(器の中の水と蒸気の粒の数)、🔬 条件の固定(昼夜と季節を止める)、🌡 場の表示(圧力を色で見る)。SANDBOX は ここから開ける。通信も登録も要らない。
1. 閉じた器で水を沸かすと(ボイラーを破裂させる)
予想を立てる
ガラスで囲った器の底に水が入っていて、下からヒーターで熱している。「割れる」と思う人が多いが、どこが、いつ割れるかまで予想してほしい。天井か、横か、底か。沸いてすぐか、しばらくしてからか。
模型の中で起きること
- 水は 100 ℃で蒸気になる。蒸気は気体なので上へ昇り、器の中の圧力を上げる(気体の粒が増え、しかも熱いほど圧力に効く)。
- 圧力は 4×4 マスの「格子」ごとに持っていて、器の中はどこも同じくらいの値になる。水の中で沸いて生じた圧力は、水を通り抜けて上の空気にたまる(水は縮まない)。壁は風を通さないので、圧力は逃げ場がない。
- ガラスの限界は 3.5。圧力が限界を超えた状態が続くと壁が壊れる。一瞬の爆風では壊れない──限界超えが 3 回続けて確認されたときに壊れる(応力の蓄積。24 歩ぶん)。
- 壊れるのは、圧力が限界を超えている格子に面した壁のどこか。天井と横が同じ圧力なら、どちらから壊れてもおかしくない。ここが予想とずれる人が多い。実際の圧力容器も「弱い所から」壊れるのであって、「上から」とは限らない。
数で確かめる
- 🧪 から「ボイラーを破裂させる」を準備する。
- 📈 を押して、器の中(水の上の空間)を押す。温度と圧力のグラフが右下に出る。
- 圧力が 3.5 を超えてから何秒で割れるかを数える。割れた瞬間、圧力の線が急に落ちるのを見る。
- CSV に出して表計算に貼れば、「圧力が上がり始めた時刻」と「割れた時刻」を読み取れる。
2. 安全弁で破裂を防ぐ
同じ器の天井の 2 マスを安全弁に置き換える。安全弁は圧力が 1.2 を超えると開き、隣の気体を外へ逃がして、つながった部屋の圧力を抑える。
- 圧力計(器の左上の 2 マス)は色で圧力を示す。安全弁があると、色は上がっても限界には届かない。
- 📈 のグラフは、1.2 のあたりでのこぎりの歯のように上下する。上がる → 弁が開いて逃げる → 下がる → 閉じる → また上がる。これが「制御」の形。実際の圧力鍋の重りや、ボイラーの安全弁、電気ポットの蒸気口も同じ考え方でできている。
- 弁を 1 つにすると、逃がす量が足りずに圧力が上がりやすい。弁を 4 つにすると、逃げすぎて圧力が上がらない。弁の数を変えて、のこぎりの歯の高さと間隔がどう変わるかを比べると面白い。
発展:弁を置かずに、天井に小さな穴(1 マスの空き)を開けたらどうなるか。穴からは蒸気が漏れ続けるので圧力は上がらないが、水は減り続ける。「圧力を保ちながら、水を減らさない」には弁が要る、という違いに気づけるとよい。
3. レンガの器はどこまで耐える
材料を変えると限界が変わる。模型の限界の表:
| 材料 | 圧力の限界(厚さ 1 マス) | 熱いとき(およそ 95 ℃以上) | 覚え方 |
|---|---|---|---|
| ガラス | 3.5 | 2.1(0.6 倍) | 硬いが割れやすい |
| レンガ | 5.5 | 5.0(0.9 倍) | ガラスより強い。焼いて作るので熱にも強い |
| 木 | 6 | 6(変わらない) | 粘るが燃える |
| 石 | 9 | 7.7(0.85 倍) | 厚い壁の定番。熱に比較的強い |
| 金属 | 12 | 7.2(0.6 倍) | いちばん強い。熱をよく伝える |
| 黒曜石 | 壊れない | ── | 模型の中では「絶対の壁」 |
壁は厚いほど強い。同じ材料でも、壁の厚さが 2 マスなら限界は 1.75 倍、3 マスなら 2.5 倍、4 マスなら 3.25 倍…(6 マスまで)。本物の圧力容器や大砲の筒も、中の圧力に合わせて壁を厚くする。実験「レンガの大砲」では、厚さ 3 マスのレンガの筒が火薬の爆発に耐えて鉄球を撃ち出す。壁を 1 マスに削ると、同じ火薬で筒が割れる。
爆発のすぐ近くでは、レンガと石は砂利(かけら)に砕け、ガラスと金属は散る。どれも燃えないので、灰にはならない。
- レンガのボイラーは、ガラスなら割れている圧力 3.5 を越えてもしばらく持つ。だが器の壁が熱くなると限界が落ちる(熱で弱る。金属は 0.6 倍、石は 0.85 倍、レンガは 0.9 倍)。ヒーターに近い底の方が先に熱くなるので、底の近くから崩れやすい。
- 金属で囲うと限界は高いが、金属は熱をよく伝えるので、器全体が早く熱くなる。「強いが熱くなりやすい」と「弱いが熱くなりにくい」のどちらが長持ちするかは、やってみないと分からない。同じ形で材料だけを変え、割れるまでの時間を比べるのが、この実験の中心。
- 模型の中の数は相対値で、実際の材料の強さ(MPa)と一対一では対応しない。順番(ガラス < レンガ < 木 < 石 < 金属)と「熱で弱る」という傾向だけを見てほしい。実際のレンガも高温で強度が落ち、鉄も赤熱すると柔らかくなる。
4. ダムを決壊させる(水圧は深さに比例する)
木の壁が深い水を止めている。しばらく眺めていると、壁の下の方が折れて水が流れ出す。
- 水の圧力は、その上に乗っている水の重さで決まる。深いほど大きい。壁の各マスは「自分より上にどれだけ水があるか」で押される。
- 模型の限界(水の深さ、マス):ガラス 18・木 26・レンガ 36・石 60・金属 70。木の壁は深さ 26 を超える所から壊れ始める。壊れる位置が「限界の深さ」のあたりになるのを、壁の高さを数えて確かめられる。
- 壁を石に替えると、同じ深さでは壊れない。もっと深くすれば石も壊れる。「どの深さで壊れたか」を材料ごとに測って表にすると、限界の順番が見える。
- 本物のダムが下ほど厚いのは、まさにこのため。水圧 p は密度 ρ・重力 g・深さ h の積(p = ρgh)で、深さに比例する。模型もこの比例を保っている。
発展:同じ深さで、水の幅(横の広さ)だけを変えた 2 つのダムを並べる。壊れる深さが同じなら、圧力は「水の量」ではなく「深さ」で決まっている。
5. 蒸気で鉄球を飛ばす(圧力差が物を動かす)
ボイラーの右に噴射口があり、圧力が上がると蒸気が吹き出して鉄球を押す。鉄球はガラスの板に当たって割る。
- 噴射口は「背中側の部屋の圧力が高いときだけ、置いた向きに吹く」出口。吹いた分だけ部屋の圧力は下がる(圧縮した気体が逃げる)。
- 鉄球は速度を持つ粒で、風・噴射・爆風で加速する。速ければガラスや氷を割り、石や金属では跳ね返る。鉄球どうしがぶつかると勢いを分け合う(運動量の受け渡し)。
- 圧力計の色と鉄球の飛び方を一緒に見ると、「圧力が高いほど遠くへ飛ぶ」ことが分かる。📈 で噴射口の手前の圧力を記録し、飛んだ距離と並べて表にする。
- 本物では、蒸気機関・空気銃・ロケットのノズルがこの原理。噴射口の向きを上にすると、鉄球は上へ飛んで落ちてくる(放物運動の入口)。
6. 課題で確かめる
🎯 の課題に「ボイラーを 60 秒守れ」がある。金属の底とガラスの胴の閉じたボイラーが熱されていて、器に穴を開けずに 60 秒もたせる。安全弁をいくつ、どこに置くか。安全弁を置かずに胴を金属に替える手もある。達成すると星がつく。「蒸気をとじこめる」(ふたをして蒸気 40 粒)、「水を右の池へ引く」(石の尾根を掘る)も圧力と水の実験。
7. まとめの問い
- 圧力が上がるのは「気体が増える」からか、「気体が熱くなる」からか。器の中の蒸気を 📏 で数えながら、温度も同時に見て答える。
- 安全弁が 1 つと 3 つで、圧力のグラフはどう違うか。
- ガラスの器と金属の器、割れるまでの時間はどちらが長いか。理由を「限界」と「熱の伝わりやすさ」の両方から説明する。
- ダムの壁が下から壊れるのはなぜか。上から壊れるダムがあるとしたら、どんなときか。
8. 模型の限界(ここは本物と違う)
- 圧力の数は相対値。実際の気圧(Pa)に換算はできない。
- 壁が「壊れる」のは、限界超えが続いた格子に面したマスが空になる、という単純な規則。ひびが広がる、破片が飛ぶ、といった様子は再現していない。
- 蒸気の熱量は簡略化している。実際に水を全部蒸気にするにはもっと多くの熱が要る(潜熱)。
関連:熱の実験(沸騰・凝結・凍結)、風と運動の実験(砂丘・噴射口・鉄球)、SANDBOX の科学(模型の仕組みと限界)。